ジャカルタの日本人が思うこと

ジャカルタ在住15年の日本人が思う、日本とインドネシアのいろいろなこと。

東京は文化都市:都市の蓄積は財産です

ちょっと前に「上海では現金なしで生活できる」のような中国スゴイ論がにわかに盛んになった。私はもちろん中国の事情は詳しく知らないが、報道を見聞きし、また中国在住経験者の話を聞くと、誇張はあってもデタラメではないと思える。

反発を受けることを覚悟して書けば、日本が20年以上立ち止まっている間に、アジアの国々は大きく前進し、日本はもはや最先端でも、特別な憧れの対象でもなくなってしまった。私も日本人として残念で悔しいけど、これはもう事実として受け入れるしかない。ジャカルタでさえ部分的には東京よりも先進的だし、シンガポールと比べると東京って田舎だとすら感じる。きっと上海や北京もシンガポール並みなのだろう。


でも、だからといって東京が魅力のない都市なのかというとそれも違う。海外経験組がツイッターで「住む場所を自由に選べるなら日本は絶対に選ばない」と言うようなことを言ってたりするけど、私は断然逆だ。金銭的な問題(日本はお金が稼げない)を無視できるのであれば、私は東京に住む。

 

何年か前のことだが、趣味でサックスを吹いているインドネシア人の知人が、初めて日本へ観光に行った。彼は御茶ノ水で楽器屋に立ち寄ったそうだが、偶然寄ったその店の品揃えや商品知識はジャカルタの最大の楽器屋を遥かに上回ることに感動していた。

 

www.museummacan.org

去年、ジャカルタにオープンした新しい美術館。最初の企画展として草間彌生展を開催して賑わった。こんなイベント、ジャカルタでは珍しい。

 

文化が定着するには時間とお金がかかる。この例で言うと、音楽に積極的にお金を払う人が一定数以上いて、はじめてアーティストや楽器屋を含む関係産業が成立する。大都市として歴史がある東京には、こうした文化が蓄積されている。今の日本の経済情勢を考えると、この先維持されるか不安だし、アジアの新興都市だってこれからどんどん文化的な力を蓄えていくだろう。でも少なくとも現時点でこの蓄積はジャカルタを大きく上回っているし、私の知る範囲内であれば他のアジアの都市と比べても優位にある。

私は。来年1月に予定している帰国ではフェルメールムンクが見られるのを楽しみにしているが、東京ではこのレベルの美術展が常に1つは開催されていると思う。そんな都市、世界にそんなにたくさんはない。

東京のちいさな美術館めぐり

東京のちいさな美術館めぐり

 

 こうした東京の文化都市としての蓄積は、日本人自身あまり気が付いていないように感じられる。だからあまり対外的にもアピールされていないのではないか。フェルメール展なんてアピールすれば、「じゃあ次の連休は東京でフェルメール見て、旨いものでも食べるか」なんていう金持ちが東アジアには幾らでもいるような気がする。逆に東京周辺に住んでいる方は、この文化的な環境を無駄にしないで美術館でも博物館でもコンサートなどの催しでも積極的に足を運ばないともったいないお化けが出ますよ。