ジャカルタの日本人が思うこと

ジャカルタ在住15年の日本人が思う、日本とインドネシアのいろいろなこと。

安産の願いは世界共通:妊娠にまつわる習慣あれこれ

相変わらず全く更新しないブログですが実はこの間、妻が妊娠し、無事4月末に出産した。新型コロナウィルスの影響でさまざまな規制が行われている時期にあたったので、妻は予定日が近づくとラピッドテストを受けさせられ、さらにPCR検査を産院に受けに行ったそのタイミングで産気づくという最高に2020年らしいエピソードの出産となったが、比較的安産でその後も元気に育ってくれている。

 

インドネシア人はイスラムをはじめ各自の宗教を大切にしている人が多いが、それ以前から伝わっているのであろう土着の迷信のようなものも好きである。まして妊娠中は万が一の事態を避けるためどんな小さなことでも気になるようで、普段は礼拝もしないし縁起を担ぐことに興味もない私の妻でさえ色々な習慣を気にしていた。

例えばマグリブ(日没時の礼拝)の時間には家に戻らなくてはならないというルールを遵守し、家の前で近所の奥様方とおしゃべりしていてもマグリブの礼拝を呼びかけるアザーンが聞こえると家に戻ってきていた。これは出産後も同じで、マグリブの際には子どもを抱いていないといけないという。日没で体が冷えることや犯罪に遭遇することを避けるためこうした習慣ができたのかもしれない。

また紐をきつく結んではならない、四つん這いになって床を磨いてはならないなどのルールがあるそうだ。紐を結ぶとへその緒が胎児の首に絡みつくというが、お腹のあたりに力が入り、流産の原因になりそうな行為を避けるためなんじゃないかと思う。

他にもパイナップルを食べると流産になる(これはインドネシアだけでなく南国に広くある禁忌らしいがWHOのサイトで調べた限りでは流産との関連性はないらしい)とか、殺生をしてはならない(なんとなく仏教由来な気がする)、長く使われていない部屋に入ってはならない(なんでだろう? 不衛生だから?)というのもメジャーなルールなようだ。この辺は広いインドネシアのこと、地方によりさまざまなルールがありそうだ。


個人的に最も印象深いのは魔除けのために乾燥させた生姜の小片を衣服、就寝中はまくらに安全ピンでくっつけるという習慣だ。ちなみに出産後はベビーベッドに生姜を置く。本来は生姜の他にコーラン、はさみ、竹ぼうきなども置くそうだ。

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獣の爪のような生姜を置いて眠る我が娘

日本でも魔除けにほうきや刃物を用いることがあるので、中国かインドあたりの習慣が他国に広まったのか、それとも人間はある程度普遍的に邪悪を打ち倒すための武器としての刃物、汚れを掃き清めるほうきに破邪の意味を見出すのか由来が大いに気になるところだ。

生姜に魔除けがあるというのはやはり消毒作用のためだろうか。酒や塩に邪悪を避ける効果があるとされたり、神社に入る前にもイスラムの礼拝の前にも手やら足やら口やらを洗うのも、呪いや穢れというのは結局のところ疫病であり、それに強いものが神聖とされたのではないかと思わざるを得ない。

 

枕元に生姜を置くことでコロナウィルスを避けられるとは思わないが、これまで疫病と戦い続け、我が子の息災を祈り続けてきた人類の歴史に思いをはせて、生姜は当分置き続けようと思う。