ジャカルタの日本人が思うこと

ジャカルタ在住15年の日本人が思う、日本とインドネシアのいろいろなこと。

はじめまして:南方の芸術の島から

はじめまして。

インドネシアの首都ジャカルタに15年ほど住んでいます。インドネシア人の友人と小さな会社を作って生計をたてています。インドネシア人の女性と結婚していますが、子どもはいません。日々なんとなく思うことをつらつらと書いていけたらと思い、ブログをスタートしました。


インドネシアは好きか-こう聞かれると、質問者がインドネシア人であろうとなかろうと大抵の外国人は「好きだ」と答えるだろう。本当に好きな人も多いし、それが一番安全な答えだから「公式回答」としてそう答えてる人もいるだろう。あるいは仲の良い人の集まりだったら、インドネシアへの悪口大会になるかもしれない。外国人の中にはインドネシアに心底うんざりしている人もいる。
僕は「インドネシア素晴らしい。大好き」という人も「インドネシア、クソ。死ね」という人も信用しない、というかまだまだだな、と思う。どう考えてもインドネシアは理想郷でも地獄でもない。長所も短所もある普通の国だ。
日本で生まれ育った日本人なら、日本の素晴らしい点を5個や10個簡単に言えるだろうし、逆に悪い点を同じ数だけあげることもたやすいはずだ。対象を日本ではなく、出身都道府県や母校、あるいは家族にしても同じだ。よく知れば知るほど素晴らしいばかりのものも、悪いばかりのものも(ほとんど)ないことに気付く。
だから、前述の「インドネシアは好きか」と聞かれると、僕は口では「好きです」と答え、心では「好きとも嫌いとも言えない」と答える。日本で日本人にこれを聞かれている外国人も同じなんじゃないかと想像する。

珈琲の哲学 ディー・レスタリ短編集 1995-2005 (インドネシア現代文学選集)

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で、今日は最初のエントリーなのでインドネシアの好きなところから。
インドネシアはさまざまな民族が入り乱れる多民族国家なので、一概にインドネシア文化を論ずるのは難しいのだが、最も人口が多く、中心的なジャワ島(ジャワ人、スンダ人)の文化で僕が気に入っているものの一つが、芸術に対する敬意の高さだ。
あまり収入の高くない人の家でも、たいていカリグラフィー(コーランの一節を書いたアラビア語の書道)とジャワの農村やら伝統市場やらを描いた絵が飾ってある。もちろん複製画かアートポスターに過ぎないけど、日本で油絵(っぽい絵・ポスター)が飾ってある家は珍しいのではないだろうか。
多くのバイクが行き交い排気ガス臭い通りに絵を並べて売る小さな店が普通にあって、絵を買うというのがお金持ちだけの行為じゃないことが伺える。
ある程度余裕のある家庭では、子どもに実学以外に何か一つぐらい芸術を学ばせようという意識も高いようで芸術系の習い事も盛況なようだ。ヤマハのピアノ教室も大人気だと聞いている。
日本風のマンガ教室も人気が高いが、実態は本格的なマンガ作品を作るというより小さな子どものお絵かき教室になっているとも聞く。比較的手軽に始められるアートという位置づけなのかもしれない。

もともとジャワやバリが稲作なら二期作、三期作ができ、その辺に勝手に果物が実っている豊かな環境で、あくせくしなくても生きていけるが故に、こうした芸術(と時間に対するルーズさ)が育まれたのだろう。欧米のリベラルアーツに通じるようなこの芸術への感覚を、大学までもが就職予備校化している日本は見習うべきなんじゃないかと思う。

国や民族ごとに適正の高い職業がある。日本人なら職人や接客だろうけど、ジャワ人、スンダ人、バリ人はアーティストだと思う。この先、ASEANの中でファッションやデザインをリードすることもあり得ると期待している。

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道端の絵描きさん