ジャカルタの日本人が思うこと

ジャカルタ在住15年の日本人が思う、日本とインドネシアのいろいろなこと。

ジャカルタはノラネコ天国:奴らは都会の異邦人だ

イスラム的にはイヌは不浄な動物だが、預言者ムハンマドが好きだったといわれるネコはインドネシアでも人気のペットである。イヌを飼うのは華人などの少数派で、ネコの人気が圧倒的だ。とはいっても、普通の庶民的インドネシア人は、放し飼いというか、ノラネコに餌付けしているだけというか、日本でも昭和の頃によく見られた飼育方法をしている。完全室内飼育をしているのは若い中間層以上か在留外国人ぐらいのようだ(私もその一人だ)。

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妻の実家に勝手に侵入しくつろぐネコ

 

飼われているネコは多いが、ノラネコも多い。日本ではノライヌどころか、ノラネコさえあまり見なくなったような気がするが、ジャカルタは屋台の周りに集まって食べ物をねだったり、日陰でごろ寝していたり、ノラネコだらけだ。当然のことながら、やせ細っていたり、ケガしていたり見ていてかわいそうになってしまうようなのも多い。

ノラネコがたくさんいる事がいいことなのか、悪いことなのかはよく分からない。ジャカルタでは雨季になると頻繁に洪水が起きるが、その際に体力のない幼児やお年寄りが感染症でなくなることがある。この感染症は動物の糞が洪水で溶け出し、傷口から人体に侵入するケースが多いと聞く。ネコの糞による感染症もあるので、公衆衛生上の問題といえるかもしれない(ただ、一番危険で多くの感染症を媒介するネズミを狩ることでトータルでは公衆衛生に貢献しているような気もする)。

 

 インドネシアのネコもちゅーるは大好き


個人的にはノラネコがいる街は嫌いではない。人間に飼われているネコは幸せそうだが、完全にペットで、自立した存在ではない。だけど、ノラネコは時に人間に甘え利用しつつ、人間とは異なる理で暮らす別の生物だ。
別にノラネコに限らず、アリもハエもそうだと言われればそうなのだけど、ある程度大きくて、感情の存在が感じられる哺乳類が身近なところで、人間と肩を並べて生きているという事実はちょっとエキサイティングじゃないだろうか。
ノラネコという言葉が強くたくましく生きる者の比喩で用いられることがあるように、彼らは決して人間のペットでもジュニアパートナーでもなく、対等の存在。ノラネコは何と言ってもそういうクールな生き物で、「もののけ姫」に出てくるイノシシ神や犬神たちのような人間に征服されていない動物だ。
地球は人間のものだけじゃないし、人間の生き方だけが正しい生き方でもないし、人類がたどってきた進化だけが正解なわけでもない。外国を知ることで、自国のいいところ、悪いところを相対的に理解できるようになるというけど、それだったら、身近な異生物であるノラネコから学べることも多いはずだ。